ラボノート|写真だけのパーソナルカラー診断が難しい理由を、データで

ミオ · Stylist
アプリを作るときに、自分たちの診断がどれくらい当たるのかを、正解データで測りました。気持ちいい数字ではないけど、全部書きます。
使った正解データ
イタリアの研究チームが公開した Deep Armocromia(顔写真に4シーズン+12分類のラベル、train 4,008/test 912)と、そこから抽出された肌・髪・目の色の特徴量(L*a*b*、ITA、彩度)。画像そのものは再配布されていないので、特徴量で検証しています。ラベルは欧米のセレブ写真(CelebA)にアルモクロミア(伊のパーソナルカラー体系)の規則で付けられたものです。
結果
| 方法 | ブルベ/イエベ | ライト/ディープ | 4シーズン |
|---|---|---|---|
| 手決めの閾値(初期版) | 52.7%(≒当てずっぽう) | 60.7% | 33.8% |
| 特徴量で学習した線形モデル | 70.9% | 75.2% | 52.5% |
| 公開されている最良(古典ML) | — | — | 55.6% |
| 公開されている最良(深層学習) | — | — | 55.4% |
15個の色の特徴だけの軽いモデルで、研究水準(55.6%)に近いところまで来ました。これをアプリに埋め込んでいます。当てずっぽうが25%なので「倍は当たる」けれど、「半分は外れる」とも言えます。
わかった3つのこと
1. 判定は髪色に引きずられる。 ブルベ/イエベを最も当てる単一の特徴は肌ではなく「髪の黄み・彩度」(テスト正答率 0.68)、ライト/ディープは「髪の明るさ」(0.72)でした。肌の色相角はクラス平均が全シーズンほぼ同じ(約50°)で、判別力がほぼない。
2. 黒髪だと明度が判別できない。 黒髪(髪 L* < 30)のサブセット(2,660件)だけで再学習すると、ブルベ/イエベは肌・目からでも64%当たる一方、ライト/ディープは「多数派(ディープ)を言い当てるだけ」で情報ゼロ(75.1% vs 多数派 74.4%)。日本人の多くは黒髪なので、これは大きい。
3. 写真は明るさと色温度に弱い。 同じ顔の明るさを±15%変えるだけで、初期版は7人中4人の判定が反転。白目を無彩色の基準にしたホワイトバランス補正で色温度には強くなった(反転 3/14 → 0/14)けれど、明るさは原理的に補正しきれない(露出補正も試したが、白目が眼窩の影に入るため全員「明るい」に振れて失敗)。
| 摂動 | 初期版の反転 | 学習モデル版の反転 |
|---|---|---|
| 明るさ ±15% | 5/14 | 1/14 |
| 色温度 暖/寒 | 3/14 | 0/14 |
| 縮小・再圧縮・トリミング | 1/21 | 1/21 |
だから、こう設計した
- 写真の計測値は「学習済みモデル」で判定(初期版の手決め閾値は廃止)
- 黒髪の場合は黒髪専用モデルに切り替え、明度スコアを圧縮し、「明度は写真から判別できない」と画面に明記
- 境界(スコアが±0.2以内)のときは「撮り直し推奨」を表示
- ドレープ診断相当の7つの質問で軸を補強し、確定度として可視化。黒髪で写真の明度が不確かなときは回答を優先
ユーザーができる対策
- 自然光(窓際・昼)で撮る。蛍光灯・電球色は避ける
- 露出を上げすぎない。「少し暗いかな」くらいが肌の色は正確
- 白い紙や白い服を画面に入れる(将来のバージョンで基準色として使う予定)
- 質問に全部答える。特に「ゴールド/シルバー」と「黒い服の印象」
まだできていないこと
日本人の「プロ診断済み」写真での検証。公開データは欧米のセレブ写真がベースなので、黒髪・日本人の肌での精度は別途データが必要です。集まり次第、ここで公開します。

ミオ · Stylist
「AIが当てます」と言い切るのは簡単だけど、それはしたくない。当たらない条件を先に言っておくのが、ラボの流儀です。
Q他社のAI診断は「95%の精度」と書いているけど?+
評価データと評価方法が書かれていない精度表示は比較できません。少なくとも「何枚の・誰がラベルした・どの分類の」正答率かが必要です。公開研究の水準は4シーズンで55%前後です。
Q深層学習にすれば上がる?+
公開データでは深層学習(55.4%)と古典ML(55.6%)が同等でした。ボトルネックはモデルではなく「ラベルの一貫性」と「写真の撮影条件」です。
Qなぜ精度の低い機能を出すの?+
「写真+質問」で実用レベルに近づけられること、そして限界を明示することで、サロン診断の代替ではなく「サロン前の準備」として役立つからです。
参考・出典
- Deep Armocromia: A Novel Dataset for Face Seasonal Color Analysis and Classification (2024)
- armocromia-classical-ml — Classical ML benchmark with CIELAB features (IAIT 2026)
- Machine Learning for Color Type Classification in Fashion: A Literature Review — J. Pinsker
- Chardon A. et al., Skin colour typology and suntanning pathways (ITA), 1991
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